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第134話 君臨は背中から始まる

last update Veröffentlichungsdatum: 14.06.2026 18:31:44

 そのまま、サロンの中央へ出る。

 ランウェイではない。

 けれど、テーブルの間に一本の道ができていた。

 深い青のドレスが、脚に沿って落ちる。

 背中が冷たい。

 視線が、そこへ刺さる。

 一歩。

 作る側では分からなかった重みがある。

 もう一歩。

 見られることは、奪われることに似ている。

 それなのに、肌の奥がかすかに熱を持つ。

 視線を集めることが、こんなにも怖くて、こんなにも甘いものだとは知らなかった。

 でも、見せ方を選べば、支配することにもなる。

 私は途中で一度だけ、視線を切った。

 誰かが息を吸う気配がした。

 その瞬間、止まっていたドレスの背中に、一本の線が入った。

 失われた愛。

 それは、泣く女の正面ではない。

 君臨すると決めた女の背中に出る。

 分かった。

 私は振り向く。

 レオーネが、満足そうに見ている。

 その後ろで、さっきまで談笑していた客人たちが黙っていた。

 真珠の老婦人はグラスを持ったまま、私の背中を見ている。

 若い男のひとりは、笑いかけた口元の形を忘れたみたいに固まっていた。

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